東京都文京区本郷三丁目Personal training studioカメシチ、管理栄養士&ピラティストレーナーの吉田尚弘です。
昼間だけではなく、夜も当直という形でお仕事をされている職業の方達がいらっしゃいます。所謂、夜勤ですね。看護師、医者、警備関係など色々な仕事がありますが、よく相談されるのが、なかなか痩せにくいという内容。これは
夜勤という働き方が「痩せる仕組み」そのものを、根底から狂わせているのです。
この記事では、夜勤が痩せにくさを招く科学的なメカニズムと、体質から変えていくためのアプローチをお伝えします。
「体内時計」が狂うと、同じ食事でも太りやすくなる
私たちの体には、脳だけでなく、肝臓・脂肪組織・膵臓など、全身のあらゆる臓器に「体内時計(概日リズム)」が存在しています。この時計が正常に動いているとき、代謝は最大限に機能します。
ところが夜勤では、光・食事・活動のタイミングがすべて体内時計とズレます。
その結果、何が起きるか。
ハーバード大学の研究では、概日リズムを意図的に乱した被験者で、夜間帯の食後血糖値が昼間と比べて大幅に上昇し、インスリン分泌が増加することが確認されています。つまり、同じ食事内容でも、夜に食べるだけで血糖値が上がりやすく、脂肪として蓄積されやすくなるのです。
「深夜に食べたら太る」という感覚は、単なる経験則ではなく、体の設計上の問題です。

コルチゾールのリズムが逆転し、脂肪が内側から蓄積される
「コルチゾール」はストレスホルモンとして知られていますが、実は代謝において非常に重要な役割を持っています。健康な状態では、朝に高く、夜に低くなるリズムが保たれています。このリズムが体の修復・代謝・エネルギー管理を調整しているのです。
夜勤が多い方では、このリズムが反転・乱れます。
その結果として起きることが2つあります。
- 筋肉の分解が促進される:コルチゾールが慢性的に高い状態では、体がエネルギー源として筋タンパクを分解し始めます。筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、さらに痩せにくい体になっていきます。
- 内臓脂肪が蓄積されやすくなる:コルチゾールとインスリンが同時に高い状態は、内臓周りへの脂肪蓄積を強力に促進します。
睡眠不足が「食欲ホルモン」を狂わせる
夜勤が多くなると、寝不足を実感しているでしょう。しかし、睡眠不足が「痩せにくさ」に直結するメカニズムを知っている方は少ないかもしれません。
シカゴ大学の研究では、睡眠を4時間に制限した被験者でグレリンが約28%増加し、レプチンが約18%低下したことが報告されています。
グレリンは食欲を高めるホルモン、レプチンは「満腹です」と脳に伝えるホルモンです。
つまり睡眠が足りないと、食欲は増加するのに、いくら食べても満足感が得られない状態になります。しかも、グレリンが増えると特に「高糖質・高脂質の食品」への渇望が強まることもわかっています。夜勤明けにコンビニでがっつり食べてしまうのは、ホルモンが命令しているのです。
| ホルモン | 睡眠不足時の変化 | 体への影響 |
|---|---|---|
| グレリン(食欲増進) | 約28%増加 | 食欲亢進・高糖質食への渇望 |
| レプチン(満腹感) | 約18%低下 | 食べても満足できない |
インスリン抵抗性が高まり、糖を脂肪に変えやすくなる
インスリンは、食事から得たブドウ糖を細胞に取り込ませる「鍵」の役割をするホルモンです。この鍵がうまく機能しなくなった状態を「インスリン抵抗性」といいます。
夜勤者では、前述の概日リズムの乱れ・コルチゾール過剰・睡眠不足が重なることで、インスリン抵抗性が健常人と比べて有意に高いことが複数の研究で示されています。
インスリン抵抗性が高まると何が起きるか。
細胞がブドウ糖を取り込めなくなるため、膵臓はより多くのインスリンを分泌しようとします。インスリンは「脂肪合成を促進し、脂肪分解を抑制する」ホルモンでもあるため、体がどんどん脂肪を溜め込みやすい方向に傾いていきます。
食事量を減らしても痩せない、むしろ疲れるだけ、という状態はここから来ていることが多いのです。

腸内環境まで乱れて、代謝の底が抜ける
近年の研究で、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)もまた概日リズムに従って日内変動していることがわかってきました。概日リズムの乱れが腸内細菌の構成を大きく変化させ、肥満関連菌が増加します。
夜勤の多い方では以下のような腸内環境の変化が起きやすいと考えられています。
- 肥満と関連するFirmicutes(フィルミクテス)菌が増加
- 短鎖脂肪酸(酪酸など)の産生が低下し、腸のバリア機能・インスリン感受性が悪化
- 腸管の炎症リスクが上昇し、慢性的な低グレード炎症が代謝をさらに悪化させる
腸内環境が乱れると、栄養の吸収効率も変わります。食べた食事から体が十分な栄養を得られず、「もっと食べて」という信号が脳に送られ続ける。これもまた、夜勤者が食欲をコントロールしにくい理由の一つです。
頑張り方」を変えなければ、努力は空回りし続ける
夜勤による痩せにくさは、カロリーや食事量だけの問題ではありません。体内時計・ホルモン・睡眠・腸内環境が複合的に乱れている状態です。
だから、「食べる量をさらに減らす」「もっと運動を頑張る」という方向性では、体への負担が増すだけで、根本的な解決にはならないことが多いのです。
夜勤が多い方の体質改善に必要なのは、次のようなアプローチです。
- 血糖値を安定させる食事の「組み合わせ」と「タイミング」の最適化(食べる量より食べ方)
- コルチゾールを落ち着かせるための副交感神経優位の習慣(ピラティスや深呼吸が有効)
- 腸内環境を整える食材の積極的な摂取(発酵食品・食物繊維・オメガ3脂肪酸)
- 睡眠の質を上げるための体温管理と光環境の工夫
- 自分の「代謝タイプ」を把握した上での個別対応
大切なのは、根性論ではなく「体の仕組みに沿った戦略」です。
まとめ:あなたが痩せにくいのは、あなたのせいではない
痩せられないのは意志が弱いからでも、生まれつきの体質のせいでもありません。体の仕組みが、あなたの努力の方向を邪魔しているだけです。
仕組みがわかれば、対策は変わります。正しいアプローチで取り組めば、夜勤のある生活でも体質は必ず変えられます。
夜勤がある生活でも体質改善できる、個別プログラムについて
Personal Training Studio カメシチでは、夜勤が多い方でもトータルダイエットコースで分子栄養学とピラティスの組み合わせで、理想の体型に近づけます。
「カロリー制限で頑張ったのに結果が出なかった」「夜勤があって、ダイエットが続かない」という方にもお勧めです。
参考文献
- Scheer FA, et al. Adverse metabolic and cardiovascular consequences of circadian misalignment. Proc Natl Acad Sci USA. 2009;106(11):4453-4458.
- Spiegel K, et al. Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-850.
- Garaulet M, et al. Timing of food intake predicts weight loss effectiveness. Int J Obes. 2013;37(4):604-611.
- Thaiss CA, et al. Transkingdom control of microbiota diurnal oscillations promotes metabolic homeostasis. Cell. 2014;159(3):514-529.

