東京都文京区本郷三丁目Personal training studioカメシチ、管理栄養士&ピラティストレーナーの吉田尚弘です。
当スタジオにいらっしゃるお客様の中で「夜眠れない」または「寝つきが悪い」と仰る方は少なくありません。
今回は、この睡眠について栄養面から深掘りしていきましょう。
まず「良い眠り」って何だろう?
「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きても疲れがとれていない」——そんな悩みを抱えていませんか?

睡眠の悩みというと、「部屋を暗くする」「スマホをやめる」「お風呂に入る」といった生活習慣のアドバイスがよく語られます。もちろんそれも大切。でも、じつはもう一つ、見落とされがちな視点があります。
それが、「栄養」です。
実は眠りの質は、毎日口にするものに、深く影響されています。
「ちゃんと眠れている」とは、布団に入ったらスムーズに眠れること(寝つきがいい)、夜中に目が覚めないこと(途中覚醒がない)、朝スッキリと起きられること(目覚めがいい)、そしてたまに夢を見ること(適度なレム睡眠がある)。
この4条件がそろっていれば、睡眠の質はかなり良好といえます。逆に、どれか一つでも欠けているなら、体は何かを訴えているサインかもしれません。
眠っている間も、脳はエネルギーを必要としている
「眠っているんだから、脳も休んでいるはず」と思っていませんか?じつは違います。
睡眠中、脳は記憶の整理、細胞の修復、免疫機能の調整など、非常に重要な作業を続けています。そのためにはエネルギー供給が欠かせません。
血糖(グルコース)は脳のエネルギー源ですが、就寝前に糖質を過剰に摂取すると一時的に血糖値が上がり、その後急降下して夜間低血糖が起こることがあります。低血糖状態になると脳が覚醒してしまいます。これが「夜中に目が覚める」原因の一つです。
寝る前の甘いものや炭水化物の多い夜食は、途中覚醒のリスクを高めます。「なんとなく寝る前に何か食べたくなる」という方は、一度この習慣を見直してみてください。
眠りを作る2大アミノ酸:トリプトファンとグルタミン
睡眠に深く関わるアミノ酸として、まず覚えておきたいのがトリプトファンとグルタミンです。
トリプトファン──メラトニンの出発点
トリプトファンは、必須アミノ酸のひとつです。体内では作れないため、食事から摂る必要があります。
このトリプトファンが体内で変換されると、まずセロトニン(精神を安定させる神経伝達物質)になり、さらにそのセロトニンが夜になるとメラトニン(睡眠を促すホルモン)へと変わります。つまり、トリプトファンが不足すると、メラトニンが十分に作られず、寝つきの悪さにつながるのです。
トリプトファンを多く含む食品は、乳製品(牛乳・チーズ)、大豆製品(豆腐・納豆)、卵、バナナ、鶏むね肉などです。
ただし、アミノ酸を摂るだけでは不十分です。トリプトファンからセロトニン・メラトニンへの変換には、ビタミンB6・鉄・ナイアシンが必要です。これらの補酵素・補因子が揃ってはじめて、代謝がスムーズに進みます。食事の多様性が大切な理由の一つがここにあります。
グルタミン──GABAの源、ストレスに消耗されるアミノ酸
GABA(ガンマアミノ酪酸)という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。GABAは脳内で「興奮を鎮める」抑制系の神経伝達物質です。GABAが十分に働くことで、脳がリラックスし、スムーズな入眠や深い眠りが得られます。
GABAは、脳内でグルタミン酸(グルタメート)を材料にして合成されます。そのグルタミン酸の前駆体となるのがグルタミンです。腸や肝臓でグルタミンがグルタミン酸に変換されますが、その時にナイアシンが必要となり、グルタミン酸からGABAに変換されるのにビタミンB6が必要となります。
「GABA配合」のサプリや食品を見かけることがありますが、じつはGABA自体は脳の血液関門(BBB)を通過しにくいことが知られています。ですから、GABAをそのまま摂取しても脳内で直接増やすことは難しく、むしろ材料となるグルタミン酸やグルタミンを食事からしっかり摂ることのほうが、理にかなったアプローチです。
さらにグルタミンには、もう一つ重要な役割があります。それがアンモニアの処理です。体内でたんぱく質が代謝されると有害なアンモニアが生じますが、グルタミンはこれを無害化するのに使われます。また、腸の粘膜細胞のエネルギー源としても大量に消費されます。
ストレスとグルタミン
実は、ストレスがかかるとグルタミンの消費量が急増します。強いストレス下では、腸の修復や免疫応答にグルタミンが大量に使われてしまいます。すると、脳内でのGABA合成に回せるグルタミンが減り、眠りの質が落ちるという悪循環が生まれます。
「ストレスが多いと眠れない」のは、精神論ではなく、栄養の問題でもあるのです。
グリシン──眠りの「スイッチ」を入れるアミノ酸
グルタミン・トリプトファンと並んで、睡眠に深く関わるアミノ酸がグリシンです。
グリシンは体内で合成できる非必須アミノ酸で、コラーゲンの主要成分でもあります。食品ではホタテ・エビ・カニなどの魚介類に多く含まれています。
グリシンの睡眠への効果は、研究でも確認されています。グリシンを摂取すると、末梢の血管が広がり、手足からの熱放散が促進されます。その結果、体の中心部の温度(深部体温)が低下します。
人の体は眠りにつくとき、深部体温を下げることで「眠る準備」をします。グリシンはこの自然なプロセスをサポートする、いわば体の内側からの「眠りのスイッチ」です。お風呂に入ると眠くなるのも、入浴後に深部体温が下がるからですが、グリシンは食事から同じような効果を引き出せる可能性があります。
味の素株式会社の研究(2007年、第32回日本睡眠学会発表)では、グリシン摂取によってノンレム睡眠時間が増加し、深い睡眠の比率が高まることが確認されています。また、不眠傾向のある方171名を対象とした臨床試験では、グリシン3gを就寝30分〜直前に4週間摂取した結果、睡眠の深さや途中覚醒の改善が認められました。
グリシンとグルタミンは相性がよく、組み合わせることで相乗効果が期待できます。グリシンによる深部体温低下と、グルタミン→GABA経路によるリラックス作用が合わさると、より質の高い睡眠につながると考えられます。
睡眠に必要な栄養、まとめると
ここまでの内容を整理すると、質の良い睡眠には以下の栄養素が深く関係しています。
トリプトファンはメラトニン(睡眠ホルモン)の材料で、乳製品・大豆・卵・バナナ・鶏むね肉に多く含まれます。
グルタミンはGABAの前駆体であり、ストレス耐性・免疫にも重要で、肉・魚・卵・乳製品・大豆から摂れます。
グリシンは深部体温を下げノンレム睡眠を促進し、ホタテ・エビ・カニ・豚皮・鶏皮に豊富です。
そしてこれらの代謝を支える補酵素として、ビタミンB6(鶏むね肉・カツオ・バナナ・玄米)、ナイアシン(鶏むね肉・マグロ・ピーナッツ)、鉄(赤身肉・レバー・あさり・小松菜)が必要です。

眠れない、それぞれのタイプ
入眠障害タイプ(なかなか眠れない)
「布団に入っても眠れない」「頭が冴えてしまう」という方は、深部体温がうまく下がっていない可能性があります。就寝1〜2時間前に入浴して深部体温を一度上げ、その後の体温低下を促すこと、寝室を暗くしてメラトニンの分泌を助けること、そしてグリシン(就寝30分前に3g程度)で深部体温の低下をサポートすることが有効です。夕食ではトリプトファンを含む食品を意識して摂るのも助けになります。
途中覚醒タイプ(夜中に目が覚める)
「朝3〜4時に目が覚めてしまう」「夜中に何度も起きてしまう」という方に多いのが、夜間低血糖とGABA不足の組み合わせです。就寝前の糖質(甘いもの・白米・パン)を控え、夕食は血糖値が急上昇しにくい食事(たんぱく質・野菜・良質な脂質中心)にすることが基本です。あわせてグルタミンを含む食品(肉・魚・卵)を日常的に摂り、GABAの材料を補給することも大切です。ストレスを管理してグルタミンが消耗されすぎない状態を作ることも、回り道に見えて重要な対策です。
さらに飲酒も覚醒の原因となります。詳しくはこちらのブログを参照
「お酒を飲むと嫌な夢を見るのはなぜ?夜間低血糖と悪夢のメカニズム」
「眠れない」を解決したいなら、まず食事を見直してみて
睡眠薬に頼る前に、考えてみましょう。
あなたの体は、眠るための材料をちゃんと持っていますか?
良質な睡眠は、良質な栄養状態から生まれます。毎日の食事でトリプトファン・グルタミン・グリシンを意識して摂り、代謝を助けるビタミンB6・鉄・ナイアシンも一緒に補う。これが、体の内側から眠りの質を変えていく第一歩です。
「ぐっすり眠れる体」は、一夜にして作れません。でも、今夜の食事から少しずつ変えていくことはできます。
もし「自分の体質に合った食事や生活習慣を知りたい」と思ったら、ぜひ一度カメシチにご相談ください。
まずは60分6,600円のトライアルからお申込みはこちらから

