東京都文京区本郷三丁目Personal training studioカメシチ 管理栄養士&ピラティストレーナーの吉田尚弘です。
痛風という症状はご存じだと思います。足の親指から足先が腫れて激しい痛みに見舞われるアレです。
「風が吹いても痛い」ので痛風。
健康診断の結果表に「尿酸値」という項目、ありますよね。これが高いと痛風になるイメージだと思います。

意外と誤解されがちなのが、「痛風は運動不足の人がなるもの」というイメージ。実際には、しっかり運動をしている人でも痛風になることがあります。むしろ運動の「種類」や「強度」によっては、尿酸値を上げてしまう方向に働くこともあると考えられているんです。
今日は「尿酸値が高いと足の親指の付け根が燃えるように痛くなる」というだけではない、尿酸そのものが持つ大切な働きと、運動との付き合い方、そして「低ければ低いほど、本当に安心?」というお話です。
痛風はなぜ起こるの?尿酸値との関係をおさらい
尿酸は、プリン体という物質が肝臓で分解されるときに作られる、体内の代謝産物のひとつです。プリン体は食べ物からも摂取されますが、実は体内で作られる分のほうが多いと考えられています。
作られた尿酸は主に腎臓から排泄され、体内での「産生量」と「排泄量」のバランスが保たれることで、一定の血中濃度に保たれています。このバランスが崩れて血中尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が「高尿酸血症」です。尿酸は水に溶けにくい性質を持っているため、高い状態が続くと関節内などに尿酸塩の結晶として蓄積し、それが引き金となって激しい炎症=痛風発作を起こすと考えられています。
実は「悪者」じゃない。尿酸が持つ抗酸化作用という役割
意外だと思いますが、尿酸は本来、体を守るための重要な物質でもあります。研究では、尿酸には活性酸素の一種であるペルオキシナイトライトや一重項酸素を除去する働きが認められており、代表的な抗酸化物質のひとつとして位置づけられています。
抗酸化ビタミンの代表であるビタミンCよりも抗酸化作用が強いのです。
人間の体には尿酸を分解する酵素が存在しないため、進化の過程で尿酸をあえて体内に残す方向に進んできたとする見方もあります。つまり尿酸は、老化やさまざまな不調に関わる「酸化ストレス」から細胞を守る、いわば体内の防御システムの一員なのです。
運動で尿酸値は上がる?下がる?有酸素運動と無酸素運動の違い
ここで運動と尿酸の関係について。
実は「運動」とひとことで言っても、尿酸値への影響は種類によって真逆になる可能性があります。

高尿酸血症・痛風の診療ガイドラインでは、ウォーキングや軽いジョギング、水泳といった中等度までの有酸素運動は血清尿酸値そのものにはあまり影響を与えず、むしろ体脂肪の減少やインスリン抵抗性の改善、血圧やHDLコレステロールの改善といった、高尿酸血症に合併しやすいメタボリックシンドロームの改善につながると考えられています。
一方で、ハードな筋トレやダッシュのような激しい無酸素運動は要注意です。無酸素運動では筋肉がエネルギーを作る過程で乳酸が急激に増えますが、この乳酸が腎臓での尿酸排泄と競合してしまうため、一時的に血中尿酸値が上昇しやすいとされています。「痛風の人は運動したほうがいい」という話だけが独り歩きして、いきなり高強度なトレーニングに飛びついてしまうと、かえって逆効果になりかねないというわけです。
高尿酸血症・痛風が気になる人におすすめしたい運動習慣
じゃあ具体的にどう動けばいいのか。ガイドラインの考え方を踏まえると、次のような運動の取り入れ方が現実的だと考えられます。
- ウォーキングや軽いジョギング、水泳など、息が弾みすぎない強度の有酸素運動を中心にする
- 「無酸素性作業閾値」を大きく超えるような、息が上がりきる高強度インターバルやハードな筋トレは頻度・強度を抑えめにする
- 運動前後にしっかり水分補給をして、脱水による尿酸濃縮を防ぐ
- 運動後の「ご褒美ビール」は避ける。アルコール自体が尿酸値を上げる要因になると考えられている
ピラティスなどの運動でしたら、心拍を極端に追い込むタイプのトレーニングではなく、正しい姿勢と呼吸で体を丁寧に動かしていくので尿酸値や関節への負担が気になる方にとっても、無理なく続けやすい運動として選んでいただきやすいのではないかなと思っています。
尿酸値は低ければいいわけじゃない。低尿酸血症のリスクとは
ここまで「尿酸値が高いこと」の話をしてきましたが、実は「低すぎる」こともまた別のリスクをはらんでいると考えられています。
一般的に血清尿酸値が2.0mg/dL以下の状態は「低尿酸血症」と呼ばれ、日本では男性の約0.2%、女性の約0.4%に見られると推定されています。原因の多くは、腎臓の尿細管で尿酸を再吸収する働きが、遺伝的な働きの違いによるものだとと考えられています。
低尿酸血症そのものは無症状で経過することが多いのですが、注意したいのは次のような点です。
- 先ほどお伝えした尿酸の抗酸化作用が働きにくくなり、酸化ストレスの影響を受けやすくなる可能性がある
- 激しい運動の後に「運動後急性腎障害(EIAKI/EIARF)」と呼ばれる、強い腰痛や吐き気を伴う急性の腎機能低下を起こすことがあると報告されている
- 尿路結石のリスクも指摘されている
「尿酸値、低くて安心!」で終わらせず、健診で2.0mg/dL以下を複数回指摘された場合や、運動後に強い腰痛・嘔気があった場合は、一度内科や腎臓内科で相談してみることをおすすめします。特に運動部に所属するお子さんがいるご家庭では、家系的な体質として知っておく価値があるといわれています。
尿酸値は「高すぎても低すぎてもよくない」バランスの数値
尿酸値というと「高いから下げなきゃ」という発想になりがちですが、今日お話ししてきた通り、尿酸は本来、体の酸化ストレスから細胞を守ってくれている物質でもあります。高すぎれば痛風や心血管疾患、慢性腎臓病のリスクに、低すぎれば抗酸化力の低下や運動後の腎障害のリスクにつながる可能性がある、まさに「ちょうどよさ」が大切な数値なんですね。
運動に関しても、「動けば動くほどいい」わけではなく、有酸素運動を中心に、強度と水分補給を意識しながら付き合っていくことが、尿酸値と長く上手に付き合っていくコツです。
数値だけを見て一喜一憂するのではなく、「この数値が体の中で何を教えてくれているのか」を考えることも大切ですね。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代替となるものではありません。尿酸値について気になる症状がある方は、医療機関にご相談ください。
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