東京都文京区本郷三丁目のPersonal training studioカメシチ、ピラティストレーナー&管理栄養士の吉田尚弘です。
マグネシウムという栄養素はご存じでしょうか?今やサプリメント業界では「奇跡の栄養素!」みたいな触れ込みで販売されていたいりします。
それは誇大広告だとしても、マグネシウムは私達の体にとっても重要な働きをすることが分かっています。今回は、そのマグネシウムが日常生活にどのように関わっているかを紹介したいと思います。
日頃から「疲れやすくなった」「お酒に弱くなった」「夜中に足がつる」「不整脈が気になる」——それ、もしかしたら“マグネシウム不足”が関係しているかも。
マグネシウムは体内で300以上の酵素反応に関わる重要なミネラル。けれど、カルシウムや鉄に比べて注目される機会は少なく、その役割や働きを知らない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、マグネシウムが関わる5つの重要な体のシステム(アルコール代謝・エネルギー産生・神経系・筋肉・循環器系)について、わかりやすく解説していきます。
1. マグネシウムは「お酒の分解」にも必要だった!
「昔よりお酒に弱くなった」と感じる方、その背景に“マグネシウム不足”が隠れているかもしれません。
アルコールは肝臓で「アルコール脱水素酵素(ADH)」によってアセトアルデヒドに分解され、さらに「アルデヒド脱水素酵素(ALDH)」により酢酸へと変わります。この2つの酵素の働きを助ける“補酵素”としてマグネシウムが関与しています。
つまり、マグネシウムが不足していると、
- アルコールの分解が遅れる
- アセトアルデヒドが長く体内に残る
- 悪酔いや二日酔いが起こりやすくなる
という現象が起きやすくなります。
さらに、アルコール自体がマグネシウムの尿中排泄を促進するため、飲酒することでマグネシウムがさらに不足するという悪循環に。

2. エネルギーを生み出す「電子伝達系」とマグネシウムの関係
「最近、すぐ疲れる…」「朝からだるい…」という慢性的な疲労感は、マグネシウム不足に起因している可能性があります。
私たちの細胞は、ミトコンドリアで「電子伝達系」というしくみによってエネルギー(ATP)を作り出しています。このATPは単体では不安定で、「Mg-ATP」としてマグネシウムと結合することで初めて使える形になります。
また、ATPを作るための前段階(解糖系・TCA回路)でも、酵素の働きを助ける役割としてマグネシウムが必要です。
つまり、マグネシウムが不足すると…
- エネルギーがうまく作れない
- ATPが活用されにくい
- 疲れが抜けない・元気が出ない
といった状態に陥りやすくなります。
3. イライラ・不眠・ストレス耐性に影響?マグネシウムと神経のつながり
神経系において、マグネシウムは「ブレーキ役」として働きます。特に重要なのが、脳のNMDA(エヌエムディーエー)受容体との関係です。
このNMDA受容体は、記憶や学習に関わる神経活動の調整に重要ですが、過剰に刺激されると神経が興奮しすぎてしまいます。
マグネシウムはこのNMDA受容体にフタをするような役割を果たし、過剰な神経の興奮を抑えてくれます。
そのため、マグネシウムが不足すると、
- ストレスを感じやすくなる
- イライラしやすくなる
- 不安や抑うつ傾向が強まる
- 寝つきが悪くなる・夜中に目が覚める
といった神経系のトラブルが起こりやすくなるのです。
4. 筋肉を「つる」「硬くなる」…それ、マグネシウム不足かも?
筋肉の収縮と弛緩は、「カルシウムとマグネシウムのバランス」で成り立っています。
- カルシウム:筋肉の収縮を促進
- マグネシウム:筋肉の弛緩(ゆるませる)を促進
このバランスが崩れると、筋肉が緊張したままになり、こむら返りや肩こり・腰痛・顎関節の緊張などにつながります。
マグネシウム:カルシウムの摂取比率は1:1が理想とされてますが、運動による発汗により、マグネシウムは失いやすく、マグネシウム不足によって神経伝達も乱れるため、「意図しない筋収縮」が起こることもあります。
睡眠中に足がつる、運動中に痙攣が起こる…そんな方は、まずマグネシウムを意識してみてください。
5. 心臓と血管の健康にも深く関わるマグネシウム
マグネシウムは「循環器系の守護神」とも呼ばれるほど、心臓や血管の健康にも欠かせません。
主な働きは以下のとおりです:
- 血管の収縮を抑えて血圧を下げる
- 血小板の凝集を抑え、血栓を防ぐ
- 心筋のリズム(拍動)を調整し、不整脈を予防する
特に高血圧や動脈硬化の予防においては、ナトリウムを控えることと同じくらい「マグネシウムを十分にとること」が大切です。
最近では心疾患・突然死リスクとの関連も注目されており、慢性的なマグネシウム不足は命にかかわる可能性も指摘されています。
6. 加齢・ストレス・飲酒…現代人はマグネシウム不足になりやすい
マグネシウムは食事から摂取する必要がある必須ミネラルですが、現代人の食生活では不足しがちです。
▶ 不足の原因としては:
- 精製食品(白米、白パン)中心の食生活
- 加齢による吸収力の低下
- アルコール・カフェインの過剰摂取
- 慢性的なストレス(排泄促進)
- 激しい運動や発汗による喪失
といった要因が重なります。
特にダイエット中や食事制限をしている方は要注意。マグネシウムを含む食材は地味なもの(海藻・豆類・ナッツ・玄米など)が多く、意識しないと摂りにくい傾向があります。
7. マグネシウムを豊富に含む食材と、効果的な摂取法
最後に、日常生活でマグネシウムをしっかり摂るためのポイントをご紹介します。
▶ マグネシウムを多く含む食材
食材 | 含有量の目安(mg/100g) |
---|---|
ひじき(乾燥) | 約640mg |
アーモンド | 約310mg |
納豆 | 約100mg |
玄米ごはん | 約49mg |
ほうれん草 | 約69mg |
大豆 | 約220mg |
▶ 効果的な摂取のコツ
- 食物繊維と一緒に摂ると吸収が安定
- ビタミンB6やビタミンDと併用すると働きが高まる
- 加工食品・糖質過多・リン酸塩(インスタント食品)を避けることも大切
まとめ:マグネシウムが整うと、あなたの体も心も整う
マグネシウムは体の中で静かに、でも確実に働いている縁の下の力持ち。エネルギー産生から神経の安定、筋肉の調整、そして心臓や血管の健康まで、幅広い分野であなたの体を支えています。
最近「疲れやすい」「不安定」「お酒が弱くなった」「筋肉がつりやすい」と感じたら、まずは毎日の食事にマグネシウムを意識してみましょう。
あなたの健康の鍵は、意外と足元にある“ミネラル”のバランスかもしれません。
あなたに必要な栄養素を見極めながら栄養指導するトータルダイエットコースの詳細はこちらから。